うつ伏せでの鍼の打ち方

ここでは伏臥位で行う、後頚部、肩上部、肩甲間部の刺鍼法について解説します。背部の刺鍼法には、一般的な眼精疲労の治療で刺鍼する基本穴、重症度に応じて加える追加穴、固有の症状や眼病に応じて加える特効穴の3種類があります。

目次

小宮式背部の基本穴(打つ順8穴)

  1. 肩井 
  2. 第七頸椎点(小宮穴)
  3. 天柱
  4. 風池
  5. 完骨
  6. 肺兪
  7. 心兪
  8. 肝兪

①肩井の摘み押し手

肩井は、第7頸椎棘突起と肩峰外縁を結ぶ線上の中点に取る肩上部の代表穴です。多種多様な刺し方があり、施術者によって、鍼の方向や深度も様々です。小宮式では、肩井は、うつ伏せで摘み押し手を行い、足から頭へ外方に向けて打ちます。この打ち方は、気胸のリスクを考慮しつつ、深層筋まで鍼を到達させるのに効果的です。

尚、肩井の摘み押手が不得手である場合は、通常の打ち方で良いでしょう。小宮式は、眼精疲労によって生じた筋肉のコリや過緊張を取り除くことが目的です。経穴は、あくまで目印なので、他に安全で効果的な鍼の打ち方があれば差支えありません。

②第七頸椎直側点(小宮穴)

ツボとしては存在しない部位です。小宮式では多くの場合、第七頸椎の直側に刺鍼します。経験的に、そこが目の酷使でコリやすい部位だからです。第七頸椎直側には、僧帽筋、肩甲挙筋、板状筋、頭半棘筋を串刺し出来るポイントです。患者さんのコリの状態によっては、第七頸椎外側の「肩中兪」を代わりに使うことがあります。

③天柱 ④風池 ⑤完骨

私たちは、眼精疲労治療を行う上で、上部頸椎、上項線部(後頭下筋群)へのアプローチを重視しています。経穴としては「天柱」「風池」「完骨」が存在します。

「天柱」は、第二頸椎棘突起から外方に僧帽筋(頭半挙筋)の外縁を触知し、眉間方向へ刺鍼します。大後頭神経

「風池」は第一頸椎と乳様突起の中間部に取り、対側の眼球に向けて刺鍼します。小後頭神経 風池は後頭下三角を通る椎骨動脈を刺激することができます。

「完骨」は乳様突起中央の後方の陥凹部に取り、対側の耳介に向けて刺鍼します。大耳介神

⑥肺兪 ⑦心兪 ⑧肝兪

次は、肩甲間部の基本穴です。足部の方に向かって、下内方に刺鍼します。鍼を打つ順番は、右肺兪→右心兪→右肝兪→左肺兪→左心兪→左肝兪の順番に刺して置鍼します。鍼の深さは患者さんの体格にもよりますが、1cm~1.5cm位を目途に刺鍼します。

肺兪・心兪は、呼吸や心拍数を緩め自律神経を整える効果がありますので、特にドライアイの患者さんには効果的です。肝兪は、

症状が重い場合の背部追加穴

眼精疲労において、以上の7穴は、ほぼ全ての患者さんに使用する、基本的な治療部位です。上項線部や後頭部のコリや痛みが強い場合は、治療部位を追加します。

上項線の「逆八の字打ち」

要差し替え

重度眼精疲労の場合、小宮式では後頭下筋への鍼を重点的に行います。例えば、視力の左右差、遠視、老視、乱視、弱視、斜視・斜位、視野欠損、像の歪み、瞼の不具合によって、後頚部への負荷が過剰に加わり、そのような場合は後頭下筋群が過緊張を起こしている場合が少なくありません。

後頚部深層筋である後頭下筋群の硬結を狙う場合は、鍼先を正中から上外方に向けて「逆はハの字」の形で打ちます。

この打ち方では、小後頭下筋と大後頭下筋に対して、筋繊維に沿った方向に刺入することで、鍼の刺激を軽減することが可能です。小後頭下筋は深部にあるため、2cm~2.5㎝程度刺入し、上項線の骨下縁にこびりついた硬結に鍼先を当て置鍼します。

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