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0,はじめに

社会情勢の急激な変化やIT社会の到来で、子供から大人まで、疲れ目・眼精疲労を来す人が急増しています。今や国民病とも言われる眼精疲労。眼精疲労ケアの確立は、急務となっています。その様な中、当院は15年以上前から、1万人以上の患者さんを対象に、鍼灸による眼精疲労治療に取り組んで参りました。

眼精疲労とは何にか?どのような治療が有効かを、WEB版教科書として、医師、鍼灸師、鍼灸学生向けに「オアシス式眼精疲労鍼」を体系化したと思います。眼精疲労治療は鍼灸界における新たなジャンルとなり得ます。これまでのような「疲れ目には、このツボ」とった表面的な内容ではなく、眼精疲労治療の新な教科書として深い内容にしたいと考えています。

1、眼精疲労の定義

皆様は「眼精疲労」について、どのようなイメージをお持ちでしょうか?もちろん、鍼灸師という職業でも、PC作業やSNSなどで常に目を酷使し、目が疲れている方が多いのではないでしょうか。それでは、はじめに「眼精疲労」を、現代医学的に定義します。

一般的に、休息や睡眠を取ることで良くなる目の疲労は「疲れ目」、休息や睡眠を取っても改善しない目の疲労を「眼精疲労」と言い、両者は区別されます。また、眼精疲労は、目の症状だけでなく、身体にも様々な不調を来す慢性的な不定愁訴症候群です。

つまり、眼精疲労は、目の疲れ・目の不具合を発端とした、全身の不定愁訴症候群と言えます。さらに、眼精疲労は、自律神経調整メンタルケアも必要な場合があり、全人的な治療が求められます。

それゆえ、鍼灸が真価を発揮する分野なのです。第二章の「眼精疲労の症状」を参照。

2、眼精疲労の典型的な症状

Aさん(30代男性 システムエンジニア)

仕事は、PC作業を中心とした長時間のデスクワーク。夕方になると目の疲労感が強くなり、仕事に集中できなくなる。時々、目の奥がズキズキ痛んだり、頭が締め付けられるように痛くなる。首と肩がガチガチに凝っている。胃腸の調子も悪く、夜はよく眠れない。最近は、身体が疲れやすく、気分の落ち込みもある。

目の痛みがひどい時は鎮痛剤でしのぎ、眠れない時は睡眠導入剤を飲む。首肩のこりに対しては、時々マッサージを受けている。心療内科で安定剤の処方を受けたが、服用を躊躇している。

今の世の中、パソコンを使わない仕事を探すのは難しい。働かなくては生計を維持できない。

私の鍼灸院には、このような患者さんの来院が、後を絶ちません。中には、諸々の体調不良の原因が、眼精疲労によるものだと気が付かずに生活している人も少なくありません。

尚、実際の治療例は第三章をご覧ください。

3、これまでの眼精疲労ケア

長年にわたり眼精疲労に悩まされている人の多くは、すでに色々な治療を経験しています。ツボ押しやマッサージをはじめ、サプリメントやビタミン剤、漢方薬。点眼薬や鎮痛剤など、メディアでも眼精疲労に良いとされる様々な療法が紹介されています。また、多くの眼科が、眼精疲労外来を開設しています。

しかし、いずれも劇的な効果は得られないような印象があります。さらに、患者さんの症状が多岐にわたる場合、様々な病院を転々とします。目が痛ければ眼科へ、頭が痛ければ脳外科へ、めまいがすれば耳鼻科へ、首肩が辛ければ整形外科へ、原因が分からず心療内科を受診する場合もあります。このように、眼精疲労の治療に出会えていない患者さん(眼精疲労難民)は、少なくありません。

4、眼精疲労と今までの鍼灸

それでは鍼灸の世界は、どうでしょうか?鍼灸では、古来より目に関するツボや経絡に基づいた治療概念が存在します。皆様もご存知の「合谷」「天柱」「風池」「清明」「攅竹」「太陽」「四白」など、目のツボは様々です。眼精疲労には「このツボ」といった標準的な鍼灸は、既に行われています。また、中国では鍼による目の難病治療が盛んです。さらに、目の症状(標治)は臓腑の病(本治)と考え、手や足のツボを刺激して全身を調整し、目の症状を取り除く、伝統的な鍼治療(伝統鍼灸・経絡治療)などもあます。

そのような中、私たちは、延べ9万件以上の眼精疲労の患者さんの治療に取り組んで来ました。その経験から、より効果的な眼精疲労の治療を行うためには、目や眼球の周囲に、適切かつ安全に鍼を刺す「新たな技術」の開発が必要だと考えました。

しかし、ここで問題がありました。鍼灸の教科書や参考書に、眼球周囲への刺鍼法を詳しく解説したものを見たことがありませんでした。残念ながら、日本では、眼球周囲の刺鍼方法に関する情報が圧倒的に少ないのです。

中国などには、鍼を眼球に沿わせて眼窩深部まで刺入する眼窩鍼という手技があります。皆様は、どちらかと言うと「危険な技」「ベールに包まれた秘伝」のようなイメージがあることでしょう。

では、目の周りに、どのように鍼を打てば良いでしょうか?

小宮式眼精疲労鍼の代表的な技法
攅竹の「扇打ち」Ougi uchi

「扇打ち」とは、攅竹穴を起点(要)として、放射状に鍼を打ち、置鍼する当院独自の技法です。目の周囲に刺さっている鍼の光景が、まるで扇(おうぎ)を広げた型のように見えることから「扇打ち」と命名しました。

攅竹(さんちく)は、字のごとく「竹」が「寄り集まる」という意味があります。一方、扇(おうぎ)は、現代の扇子(せんす)のことですが、「風を起こす道具」、また文化、装飾、芸術、芸能など古来より様々な用途で用いられてきました。扇は「竹」を束ねて、「要」止めをすることで、可変式となっています。これはまさに、攅竹に鍼を打つ際のイメージングに最適です。攅竹の扇打ちというネーミングには、鍼灸界に新たな風を起こすという意味も含めています。詳しくは第六章をご覧ください。

5、小宮式眼精疲労鍼の概要

◆小宮式眼精疲労鍼とは

近年の眼精疲労は、テクノロジーの進化によって生じた新たな現代病です。それゆえに、当治療は現代鍼灸をベースにしています。脈診などは行わず、身体の触診によって硬結(こうけつ)を捉え、直接そこに鍼を打っていきます。硬結が深部にある場合は、眼窩骨際まで鍼を刺入することもあります。鍼は主にステンレス製のディスポ鍼を用い、単鍼術と置鍼術を組み合わせて行います。経穴は指標として用いますが、ツボ以外の場所にも積極的に鍼を打ちます。

トリガーポイントとトリガーゾーン
治療技術を国際標準化するために、小宮式眼精疲労治療はトリガーポイントとトリガーゾーンという言葉を使います。これらは、医学的に世界で共通化された理論に準拠します。そのため、この教科書を通りに実践すれば、多くの方が眼精疲労を鍼で治療できるよになります。これらは第五章で詳しく解説します。

◆治療は何歳から受けられますか?

基本的には中学生以上が適応となります。但し、小児や小学生には、てい鍼を用い接触鍼で対応することも可能です。

◆どのような職業の人が治療を受けていますか?

最も多いのが、デスクワークを主とする方です。管理業務で常にパソコン画面を見ている方。経理など、細かい数字を扱う仕事をしている方。CADで図面を描いている方。特に、SEやプログラマー、デザイナーの方が多く、朝起きてから寝るまでモニターを見ているという場合も少なくありません。

また、比較的多いのが、飛行機や電車、車の運転など、運転業務に従事されている方々です。最近では医師・歯科医の方も増えています。診療でパソコン入力が必須になってきているのと、研究や論文作成などで目を酷使されています。 特殊な分野では、レーシングドライバーや競馬・競艇の選手、プロスポーツ選手などが、眼精疲労から生じる視機能低下の解消の為、受ける方もいます。受験勉強や資格試験を受ける若者や、ゲームなどで目を酷使する若者の受診も増えています。

目に病気があっても治療は受けられますか?

私たちは生活するうえで、ほぼすべての情報を視覚に頼っています。そのため、目に病気や障害があると、目を酷使しないような生活を送っていても、眼精疲労を強く感じる場合があります。 遠視や弱視の方、斜視がある方は目が疲れやすいです。また、角膜障害や、緑内障、ぶどう膜炎、網膜剥離後、網膜症などで視力が低下している場合なども眼精疲労になりやいです。当院の鍼治療を受ける方の多くが目に病気を抱えている方です。

なぜ眼精疲労治療に鍼が有効か?

・鍼は指先では届かない深部を直接刺激できる。
眼精疲労の多くは、眼窩部に蓄積されたコリが原因です。指では届かず、無理に行うと眼球を圧迫してしまう。

・鍼は刺したまま置くことができる。
 目の奥まで刺激を浸透させるには鍼を20分以上刺したままにするのが良いでしょう。

・広範囲に施術可能。
 眼精疲労は目だけではなく、頭部・首肩・背中・胃腸・自律神経、メンタルといった広範囲に影響を及ぼします。

当治療法は基本的には「こり」にアプローチする治療

鍼による治療法は様々です。小宮式眼精疲労鍼では、硬結置鍼術(こうけつちしんじゅつ)という独自の療法を用いています。ここでは「硬結」と「置鍼」という言葉に分けて説明していきます。

「硬結」とは?
最近では、硬結のことをトリガーポイントと呼びますが、これは、筋内部にできる「こりの核」のことです。指で筋肉に圧を加えていくと、シコリのような感覚がえられます。そして、患者さんはピンポイントで痛みを感じます。これらの硬結が多数形成されると、筋繊維の固着(筋・筋膜の癒着)を引き起こします。筋・筋膜の連結をファシアと呼びますが、

例えば、どんなに強いマッサージを受けても良くならない頑固な肩こりの人でも、その硬結部にピンポイントで鍼をすると、一瞬で肩全体のコリが取れるということが少なくありません。

私たちは、何万件と眼精疲労の患者さんを治療していく中で、重度の眼精疲労の患者さんには、共通した硬結部位があることが分かってきました。いわば、眼精疲労のトリガーポイントです。その正確な位置は、患者さんそれぞれで微妙に異なりますので、治療には高度な触診技術が必要となります。また、硬結部は極小なので、やはり鍼が治療には適しています。

置鍼」とは?
鍼には様々な施術方法があります。鍼を刺さない「接触鍼」、鍼を刺して直ぐに抜く「単鍼術」。そして、鍼を刺したまましばらく置いておく「置鍼術」などがあります。

小宮式眼精疲労鍼では、主に「置鍼術」を行います。先ほどの硬結(眼精疲労のトリガーポイント)に鍼を刺したまま置きます。鍼の数は、目の周りだけで少なくとも20本ぐらいとなります。20本の鍼を目の周りに刺したまま、およそ20分~30分間、目を閉じたまま休んで頂きます。

◆置鍼によって促される自律神経調整作用
鍼を体内に刺入するということは、瞬間的に組織に「傷」を作ることになります。(傷と言って鍼の直径は髪の毛と同じぐらいなので、身体にダメージを与えるものではありません。

ですから、鍼を刺した直後は、交感神経系が働きます。患部の周辺の血管は拡張し、白血球なども活性化します。その後、副交感神経が優位になり、患部に対して治癒機構が働きます。

20分~30分という置鍼によって、一連のプロセスを効果的に誘発できると考えています。副交感神経による自然治癒は、鍼を抜いた後も持続します。眼精疲労の改善は、治療直後よりも、睡眠をとった翌日の方が、より実感できるというケースが多いです。

◆どこに鍼を打ちますか
標準治療では、首、肩、背中、目の周りに鍼をしていきます。首肩背中には、様々なツボ(経穴)がありますので、症状に応じていくつかのツボを組み合わせて鍼をしていきます。以下は、当院が使用するツボ(図)。

天柱、風池、下天柱・上天柱、下風池・上風池、完骨、肩井、肩外兪、膏肓 天宗、肺兪、心兪、胃兪、腎兪、大腸兪など

また、後頭下筋群は、ツボを狙うよりも、触診で筋硬結部を探り当て、直接刺鍼するのが良いでしょう。後頭下筋群への鍼は小宮式眼精疲労鍼の最重要ポイントです。

目の周りには、あまりツボ(経穴)が存在しません。経穴は2000年前の時代に体系化された概念なので、その時代は当然PCやスマホで生じるような眼精疲労の症状がなかったのでしょう。目の周りに関しては、眼精疲労のトリガーポイント(当院独自)に鍼をします。

◆何本ぐらい鍼を刺しますか?
標準的な治療では、首肩背中に12~20本、目の周りに12~20本の鍼を使用します。これは最低限の本数ですので、実際は患者さんの症状に合わせて、鍼の使用本数は、もう少し多くなります。

当院ほど多くの鍼を目の周りに刺す鍼灸院は、全国でも稀だと思います。しかし、当院の患者さんは、大学病院や著名な眼科医の治療を受けても症状が改善しないような方が少なくありません。そのため、重度の眼精疲労を治療していく中で、現在の治療方法に至っています。

◆治療の流れ
まず問診や検査を行います。標準的な治療は、うつ伏せで首肩背中に鍼を行い、その後は仰向で目の周りに鍼を打ちます。置鍼時間にもよりますが、所要時間は60分~90分程度です。

6、小宮式眼精疲労鍼の5つの独自性

当治療法は、自らの眼精疲労体験と1万人以上の治療実績を基に、独自に体系化したものす。現代医学をベースにしています。

第一、目の症状に対して、目・眼球の周囲に鍼をしっかり打つ。

第二、目を含めた身体の治療を総合的に行う。

第三、目を治療することで、自律神経を整え自然治癒を促す。

第四、「カウンセリング」「メンタルケア」を徹底。

第五、眼科、内科、心療内科、眼鏡士など他の職と連携して、

それでは、小宮式眼精疲労鍼の5つの特徴を、詳しく解説します。

第一 なぜ、そんなにも目の周りに鍼をうつのか?

◆目の周りに鍼をして欲しいという患者さんからの声が多数

当院へ受診を希望される患者さん多くは、他院では目の周りに軽くしか鍼を打ってもらえなかった。危ないから目の周りには鍼は打てないと言われた、とおっしゃいます。

私自身は、鍼灸学生の頃から、自分で自分の目の周りに鍼を刺して、重度の眼精疲労疲労を凌いで来ました。そのため、患者さんから目が辛いと言われれば、自然に患者さんの目の周りに鍼を打って来ました。

実際、当治療は、目の周りだけで、両目12本から50本位のステンレス鍼を打ちます。

経絡治療を主に行っている先生は、使用する鍼の本数に驚かれるかもしれません。

◆眼精疲労に経絡治療(本治法)を行っていた自らの経験

私は、脈診・腹診を基に証を立て、臓腑の治療を行う本治法を行っています。経絡治療は刺激も少なく、根に栄養を与え自然治癒を促すことで、眼精疲労の改善に大きな効果が期待できます。

しかし、私の鍼灸院には、想像を遥かに超えるほど深刻な眼精疲労の患者さんが次々にやって来ます。朝起きてから寝るまで、ずっとPCやスマホを見ている方。パソコン業務で残業が月150時間を超える方。痛みで目を開けることができず、一人で歩くのも困難な方。

このような方には、臓腑の治療を行ったり、気を巡らせて自然治癒力を高める経絡治療では、とても治療が追い付きませんでした。自然治癒で治せる限界を超えていると思いました。

第二 なぜ眼精疲労の患者さんの治療では、目だけてなく頭痛めまい顎関節症、肩こり腰痛なども合わせて治療を行うのか?

例えば、目と首肩の関係についてです。実際に、当院を眼精疲労で受診する患者さんの8割以上が、首肩の凝り感を訴えています。目を使うと、なぜ首肩がこるのでしょうか。

スマホを集中して見る行為一つとっても、決して眼球だけが活動している訳ではありません。他の組織や器官が協力して、目が最適な情報処理を行えるよう、広範な活動ネットワークを形成しています。

スマホを見る時間が増え、目がオーバーユースの状態になると、それを支える他の組織や器官にも大きな負荷がかかってきます。必然的に協力しなければいけない組織や器官も増え、全体的に、より広範囲な活動状態が必要になります。

ですから、目を酷使し続けると、首や肩はもとより、背中や腕、足腰に至るまで症状が広がります。また、眼精疲労性頭痛、眼精疲労性めまい、眼精疲労性顎関節症などは、新たな疾患概念として今後、医学界でも研究が進められるものと思います。

このように当治療は、「様々な身体症状」と「眼精疲労」の関連性を精査し、目を含めた身体の総合的な治療を柱としています。

第三 眼精疲労と自律神経失調症の関連について着目

当院は全国の医療機関の中でも早い時期から、目と自律神経の関連性に着目し、治療に取り組んで参りました。眼精疲労は目の症状だけにとどまらず、頭痛や耳鳴り、めまい、不眠、吐き気、食欲不振、手足のしびれ、首肩の過緊張、動悸、微熱、冷え、全身倦怠、うつ症状などを引き起こす場合があります。

◆目と自律神経

私たちの目は近くを見る時、また遠くをみる時に自律神経による自動制御を受けています。また、視神経や網膜に酸素や栄養を供給する血管は、自律神経の働きにより拡張・収縮し、血流量が変化します。そのため、ストレスや痛みで交感神経が過度に亢進し続けると、視神経への血流量が減少し、緑内障などのリスクが増加するとも言われています。

さらに、目から入る視覚情報は脳を刺激し、概日リズムや大脳辺縁系の情動系統などに影響を与えます。それらがさらに、自律神経のコントロールに影響を与えます。目の不調が、全身の様々な不具合へ波及するのは、目が自律神経ネットワークの中核を担っているからです。

自律神経失調の原因が眼精疲労であれば、目の不具合を解消することで自律神経は整って行くことが期待できます。目と自律神経については別章で詳しく解説します。

第四、カウンセリングとメンタルケアを徹底

重度の眼精疲労は、様々な原因が複合し、悪循環を生じた状態です。従って、眼精疲労の克服は、絡み合い、複雑化した原因を解き明かしていくための問診・カウンセリングが重要です。

◆眼精疲労の内因と外因

内因では、視力不良・眼位異常、眼病による視覚器の不具合が挙げられます。また、甲状腺や自己免疫疾患なと身体の不具合により眼精疲労が起きている場合もあります。もちろん、食事や睡眠などの生活習慣の関与も重要です。

外因としては、乾燥したオフィス環境や、意外なところで、住居環境、いわゆるシックハウスやハウスダストが原因の場合もあります。

そのため当院では、眼精疲労の治療において、十分な問診やカウンセリングを行い、生活上のアドバイスなどを徹底して行うようにしています。

◆眼精疲労とメンタルケア

眼精疲労の患者さんの中には、目に病気がなく、それほど目を酷使していないにも関わらず、異常に目が疲れる、目を思うように使用できないというケースがあります。その多くが、心身に多大なストレスを受けていたり、うつ病や心身症などが基礎にある場合があります。

患者さんの中には、目の不調で休職や休学している方。目が辛くて家事や育児が上手く出来ない方。外出するのが億劫で家に引きこもっている方。 過去につらい体験をした方。など精神的なケアを必要としている方も少なくありません。

眼精疲労の治療で重要なのは、どこに鍼を打つかではありません。鍼灸師として、眼精疲労で苦しむ患者さんと、どう向き合うか、その心構を修練することが最も重要だと、私は思っています。

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