小宮式の鍼を打つための基本 押手の型

追加 押手圧の意義

切皮痛の軽減効果

ターゲットに対してスクエアな面を造る

鍼を上手く打つために必要なこと。

鍼治療は「手先の感覚」「触診」が最も大切だと、私は考えています。

ツボの正確な位置や深部のこりは、見た目では決してわかりません。鍼を打つ場所は、触診をして初めて定めることが出来るのです。

ですから、手先の感覚が鋭敏な人ほど鍼を打つのが上手いと思います。

そして、研ぎ澄まされた手先の感覚を会得するには、手先に刻まれる感触の蓄積(記憶)、つまり、経験の積み重ねが大切です。

ただし、それは鍼灸師になってからの年数ではなく、どれだけ多くの患者さんを治療してきたか、が大事なのです。患者さんを数多く治療していく中で、鍼の技術は上達していくものです。

私は鍼灸師になって14年なので、決してベテランとは言えません。しかし、日々、何千本もの鍼を打ち続けるなかで、手先の感覚に磨きをかけ、鍼を打つ精度と速度を向上してきました。

切皮痛や刺入痛が出にくい小宮式刺鍼法

鍼灸初学者にとって、触診→押し手の固定→鍼管セット→切皮→刺入という一連の動作(鍼の打ち方)を、どのように習得するかが、第一の課題となります。

これはスポーツにおける「正しいフォーム」を身につけるのと同様です。初学者の多くは、ぎこちなく、動作が遅く、迷いが生じやすいものです。一方、臨床現場では、早く正確に鍼を打つことが求められます。熟練者の鍼の打ち方は、非常にシンプルで無駄がありません。ここでは、鍼灸初学者向けに、小宮式「鍼の打ち方の基本」を解説します。(右利きとして解説)

押し手の型

鍼を打つ時に、最も重要なのが「左手の人差し指」です。鍼の良し悪しの9割は「押し手(左手)」の作り方で決まると言っても過言ではありません。

鉄則1 「押し手が重要」

それでは、実際に一連の動作を説明していきます。
まず初めに行うのは、鍼を打つポイントを探ること、いわゆる触診です。
按摩や指圧を習った人は、拇指で「こり」を捉えることを得意としているかもしれませんが、触診の基本は左手示指を中心として行います。

押手の作り方
ファーストタッチは、「柔らかく触れる」です。指全体をやや屈曲させた柔らかい手の形を作ります。皮膚面には示指を中心に親指以外の指で触れます。最初から力を入れて押すのではなく、優しく触れて、患者さんに不快感を与えないようにします。

ただし「こり」は皮膚面を強く押さないとわからないので、皮膚に優しく触れたら、次は圧を加えていきます。示指で触れた個所に硬結を見つけられない場合は、示指を前後左右にスライドさせて、こりを探ります。

鉄則2 こりは示指で探す。

次に、示指でコリを捉えられたら押手を作ります。まず、母子の先端を示指DIP下(拇指側腹)にコンタクトさせ、そのまま下方(患者皮膚面)にスライドさせます。同時に手首をやや回旋させながら、満月型の押し手を作ります。この時、腕や手首に力が入っていると、押し手がズレて、母指と示指の圧のバランスが崩れてしまいます。また、鍼管をセットする際に、押手圧が抜けないように、押し手圧を最初から最後まで一定に保つことが大切です。

押手は身体全体の姿勢で制御する。三角筋や上腕筋でコントロールして、肘から下は力まないようにする。


鉄則3 示指の圧を最後まで変化させない。

次に、鍼管を拇指と示指の間にセットします。その時に、拇指と示指は鍼管をしっかりと保持するようにします。そのまま鍼管を抜くと、自動的に皮膚が左右均等に張った状態(正三角)で鍼を保持できます。

こりを捉えた状態で、押し手にズレがなく、皮膚にしっかり鍼管が密着した状態で鍼を打てば、まず切皮痛は起こらないでしょう。

(よく鍼管を寝かせた状態で挟み刺入角度へ起こすという操作をする方がいますが、時間のロスを考えると、必ずしも必須の操作ではないと思います。また、目の周りはスペースが狭く、鍼が密集するので鍼管を動かすことが困難な場合が少なくありません。)

押し手の圧力は、どれぐらいが良いか?

患者さんの体格、筋肉の質、鍼を打つ場所によって、適切な押手圧は異なります。
また、施術者が求める刺激量によって、適切な押手圧は異なります。

これらは、経験によって自然と身につくものと言ってしまえばそれまでですが、初学者は、デジタル計量器などを使って圧にムラが出ないよう確認すると良いでしょう。

まずは押手の練習

押手圧が弱すぎる→切皮痛が出やすい、響きが得られず効果が出にくい。

押し手圧が強すぎる→皮膚面がズレて刺入痛が出やすい、患者さんに不快感をあたえる。

初学者は「切皮痛を恐れて押手圧を強くしすぎる」、緊張して「押手に力が入りすぎる(力み)」、逆に「刺入痛を恐れて押手圧を緩めすぎる」「鍼を持つ右手に気を取られて押手圧を緩めすぎる」。などを練習によって克服していかねばなりません。緩めず・力まず・・・微動だにしない。それが押手の基本です。

鍼管を叩く動作(切皮)

私は、鍼管を叩くとき、水面が乱れず、キレイな波紋が出来るようなイメージで行います。叩きが弱すぎると上手く鍼が入りませんし、強すぎると患者さんに負担がかかります。

鍼は早く正確に打てるように練習しましょう。実際の私たちの治療院では5分で30本位ぐらい鍼を打ち、2人~3人を並行して治療する場合もあります。切皮時に、何回も鍼管を叩く人がいますが、時間的なロスを考えて、2~3回程度が良いと思います。

◆押し手の方向

熟練者は、目に見えない皮膚下深部の小さな的(まと=硬結)に、どのようにして鍼先を当てるのでしょうか?ここでも押手が重要となります。

押し手の圧の方向を定めることは、皮膚下深部の硬結をロックすること同義です。それでは、硬結をロックオンするには?

鉄則4 的(まと=硬結)は押手と〇〇で挟んで固定する、

硬結は、単に一方向から圧をかけても逃げ(ずれ)てしまします。そのために、骨などを壁として使い、硬結を押手と壁の間に抑え込む、これが押手の方向を決めるポイントです。これは、按摩や指圧の経験があれば、それほど難しいことではありません。しかし、鍼灸師は右手に鍼を持つため、按摩師のように、もう一方の手で対側を支持することは出来ません。

骨などの支えが得られない場合は、左手の残った指や手根や手掌で、硬結が逃げないように押手とセットで抑え込むと良いでしょう。その代表例が、肩井のつまみ押し手です。

【補足】
・皮膚を圧して、コリとの距離を縮める。
・骨などと挟んで固定する。
・余った指や、手根などを添え固定する。

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