眼精疲労とメンタルケア、「目と心」に着目した鍼灸

眼精疲労において、目と心の関係性は、切り離せない問題です。実際に、重度の眼精疲労の患者さんの多くは、過去・現在に、甚大なストレスを受けた経験を有していまる場合が少なくありません。

そこで、私たちが取り組んでいるのが、「眼精疲労×メンタル鍼灸」という試みです。メンタル鍼灸は、心理系カウンセリングに加え、身体への施術を合わせて行う心療内科領域への鍼灸アプローチ(心療眼科鍼灸)です。患者さんのタイプは、主に3つに分類できます。

1、目の症状により心を病むケース

目の病気には様々なものがあります。突然、目の中で出血が起こる眼底出血や、急に網膜がはがれる網膜剥離など、今まで普通に見えていた人が、著しい視力の低下を被ったり、視界がゆがむ後遺症を来したり、入院や手術など、今までの生活が一変することがあります。逆に、眼を良くしようとした手術を契機に、思わぬ不調に見舞われるケースもあります。

また、緑内障や網膜症、目の難病などは、徐々に視力が失われるかもしれない不安を抱え、生きていくことになります。

日常生活において、多くの情報は、目から得ています。そのため、ひとたび目に不具合を生じると、今まで容易にできていたことが出来なくなります。また、周囲とのコミニュケーションンに支障を来すことで、非常に心身に負担が掛かります。

その結果、学校を休みがちなったり、職場を休職したり、家事や育児に行き詰まったり、夢をあきらめてしまっりと、人生そのものが揺らいでしまいます。

もし、目の病気が完治しないものであれば、私たち鍼灸師は、眼精疲労の緩和を図り、少しでも目を使いやすくしてあげることで、患者さんの負担を軽減することが治療の目的となります。目の病気と上手く付き合っていく、そのようなマインドセットを患者さんが行えるよう、精神的なケアも含めた治療を行うことが大切です。

2、心の不調から目に症状が出ているケース、心身症と眼精疲労

心身症は、メンタル疾患と言うよりは、内科疾患であると言わています。実際に、様々な鍼灸院が、不定愁訴を抱える患者さんの治療に取り組んでいると思います。心身症は、多くの人が抱える問題です。そして、今まで健康に過ごしてきた人にも、突然のストレスによって心身症が引き起こされる場合があります。自然災害やコロナ禍による生活環境の激変など、今後ますます心身症は社会的な課題となります。

Aさんは、40代のご主人が、くも膜下出血で急死し、その後から、重度の眼精疲労と眼瞼痙攣の症状に悩まされるようになりました。ご主人との急な別れを受け入れることが出来ず、今なお自分を責めているという感じでした。

道を歩いていると、意に反してギューと目が閉じてしまうため、電信柱にぶつかりそうになったり、道路で立往生してしまったり、一度閉じた目は自分の意志では開けることが出来なくなります。

眼瞼痙攣の症状は、いつ起こるかわかりません。そのため、一人では外出することさえできない状態でした。

脳外科では異常がなく、眼科でボトックス療法を受けても症状が改善しないので当院を受診。精神科での薬物療法を受けても、目の症状に変化はありませんでした。ご主人が亡くなる前までは、健康的な生活をしていたとのことでした。

心身症の症状は、胃腸障害や慢性疼痛などが有名ですが、目に機能的な症状が出る場合も少なくありません。ピント不全、眼球運動障害、眼瞼痙攣、眼瞼下垂や眼精疲労などが、その典型です。

3、メンタル疾患と眼精疲労

眼精疲労と精神科疾患を併発していることがあります。ですから、精神科疾患について知っておくことも大切です。以下は代的な症状です。

発達障害における視覚過敏

視覚過敏は、HSPなどの体質で起こる場合と、特にASD(自閉スペクトラム症)の方に出やすい症状と言われています。

  • 蛍光灯や電球の光をまぶしく感じる。
  • 白い紙など光が反射して文字が読みにくい。
  • パソコンやスマホの画面が非常にまぶしい。
  • 点滅する光を見ると気持ち悪くなる。
  • 色のコントラストが強いと目が疲れる。
  • 人混み雑多な景色を見ると頭痛がしてくる。

発達障害の診断を受けていない患者さんが、眼精眼精疲労の症状を主訴に鍼灸院を受診する場合は少なくありません。このような場合は、鍼灸のみでは治療が難航する場合が少なくありません。患者さんのバックグランドを考え、心療内科や精神科と連携して治療を行うのが良い場合もあります。

薬剤起因性の重度眼精疲労・眼球使用困難症

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