労働条件通知書兼雇用契約書(雛形)

鍼灸師の賃金には、①固定月給のみ制、②基本月給+インセンティブ、③完全歩合制(業務委託)、④完全時給制(非常勤)があります。また雇用形態は、正社員、契約社員、パート、業務委託という選択となります。いずれにしても、しっかりとした「雇用契約書」を締結することが大切です。

目次

雇用契約書は、いつ締結するか?

一般的な雇用制度では「試用期間」という慣習があります。これはあくまで慣例的なもので、労働基準法では入社日(試用期間を含む)を雇用締結日としなければなりません。

※有期雇用契約(契約社員)の場合は、具体的な雇用期間を定め、契約更新条件を明記します。また、契約社員として雇用(試用期間的な意味合い)して3か月後に正社員として登用するのも手です。

試用期間から本採用へ、試用期間中の解雇

試用期間の終了後の本採用拒否は、解雇として扱われるのが判例、実務の扱いです。そして、試用期間中であっても、解雇には合理的理由が必要とされています。合理的理由のない解雇は無効となります。合理的な理由があると認められるためには、具体的に水準に達していないことは何か、基準に達していないことの判断方法(何時、誰が、どのようにして)の妥当性・合理性・適法性、改善の可能性がないこと、などの事情が全て認められて初めて採用拒否が有効となります。

以下、本文

雇用主「株式会社オアシス」を甲、従業員「●●●●●」を乙とし、以下の雇用契約を結ぶ。

入社年月日
令和  年  月   日 (雇用期間の定めなし)

正社員か契約社員(非正規雇用)かは、雇用期間の定め有か、無かの違いです。正社員で登用した場合は「雇用主の都合で解雇する」という一方的な解雇が法的に難しく、相手がごねると訴訟に発展してしまう場合がありますので、最初の「雇用契約」が非常に重要となります。

就業場所
オアシスはり灸治療院 ( 甲と同一住所 ) とする。

■試用期間の定め
試用期間は2か月間とする。尚、試用期間中の労働契約書は別途「試用期間雇用契約書」を締結するものとする。

鍼灸院新規開設案件では不覚的要素が大きいため、研修など具体的な試用期間の在り方、賃金を別途書面で取り交わすと良いと思います。尚、試用期間の代わりに、適性を評価するための有期雇用契約(例えば3か月の有期雇用契約、その後正社員登用)はグレーですが法的に認められいます。

勤務日
火・水・木・金・土の 5 日間の出勤とする。
祝日は基本的に休日とする。

■勤務時間 
9 時 00 分~ 18 時 00 分まで(休憩 1 時間)
子供の学童保育時間に合わせ 17:00 までの時短勤務とする。

※基本は8時間労働
雇用契約書に明記できる労働時間は最大で8時間です。それ以上の労働時間は、時間外労働、残業として賃金を上乗せして別途支払う必要があります。

給与
1 基本賃金は時間給 1400 円(月額面22万円)昇給は年 1 回 1 月1日 、前年度の業績を考慮

基本給について
当院が採用しているのが「時間月給」という換算法。施術予約が無いときは帰宅OKに。月換算が平均して一般的な月給額になるように「時給」を設定。その他、日給を定める「日給月給」という換算法もあります。

鍼灸師(経験者)の基本給相場は、額面22万~25万円です。そこに数万円のインセンティブが乗る方式が良いかと思います。1人の一般的な鍼灸師が出せる売上月平均は、40万~80万円ぐらいです。売上が最低月60万円を超えないと家賃や経費で赤字になります。達人クラスだと月200万円位いきますが。尚、1人の鍼灸師が1日に施術できる最大人数は7~8人です。

【売上例】
単価6000円×月100人で月商60万円(月営業日が20日とすると1日平均5人を施術)

単価7000円×月85人で月商60万円(月営業日が20日とすると1日平均4人を施術)

昇給に関しては1年毎にして、勤務2年目の給与、3年目の給与、4年目の給与、5年目の給与の試算を出しておくのが良いと思います。月給を抑えてインセンティブの比率を増やすと、患者がいないのに給与だけ払うという経営的リスクは低くなります。

2 交通費全額支給

3 インセンティブ

・患者1人施術したら+500円
・月の施術売り上げの3%など
※頑張りによって月給に+3万~5万ぐらい上乗せされるとモチベーション上がります。

4 特別手当

みなし残業手当として、月の残業代を定額で基本給に上乗せするのも有りです。その他、皆勤手当、資格手当、家賃補助など、条件を満たした人物に支給する様々な特別手当があります。

5 賞与 業績により年 2 回支給( 12 月と 8 月)
※月のインセンティブがあれば賞与は不要だと思います。  

6 所定時間外、休日又は残業労働に対して支払われる割増賃金率
イ 所定時間外、法定超 月 60 時間以内( 125 )%
            月 60 時間超  ( 125 )%
        法定内 ( 100 )%
ロ 休日 法定休日( 135 )%、法定外休日( 100 又は 125 )%
ハ 深夜( 125 )%

7 賃金締切日-( 20 )日 賃金支払日-( 末 )日 ※賃金の支払いは口座振込み
※支払日が土日・祝日の場合は、支払日を繰下げ、翌月の最初に振り込む。

8 その他
  遅刻、早退、欠勤等により勤務しなかった場合は、その時間に対する賃金は支給しない。

9 退職手当 なし 

10 休業手当 甲の都合により乙が休業を行った場合は賃金の 9 割を支給する。 

■社会保険 
厚生年金・健康保険・雇用保険に加入する。

■欠勤
乙が欠勤を希望する場合は 2 週間前までに甲に伝えることする。

■休暇
年末・GW・夏休みは5日を目途に診療状況を加味して休暇を取ることする。

■有給休暇は法定通り。

■業務内容
施術業務(患者さんの治療を担当)
その他、清掃、洗濯 、受付会計、電話応答 、買い物など雑務全般 

■退職
乙が退職を希望する場合は 3 カ月前までに甲に伝えることとする。(専門的な技術を持って継続
して特定の患者を担当することから引き継ぎなど時間を要するため。)

上記また上記以外の事柄に関しては、甲乙話し合いにより変更・決定することとする。

平成 30 年 7 月 2 日
甲 株式会社オアシス
代表取締役 小宮 豊一
東京都北区滝野川 7-8-9 日原ビル 3 階

乙 ●●●●●●
●●●●●


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